なぜ私たちが余暇にこだわるのか

余暇を楽しむためには

一人で活動して楽しみを得るためには、その活動をするためのスキルが必要です。スキルを獲得していないのに、その活動を楽しむということはできないからです。例えば、CDを聞きたいと思っても、CDをかけるスキルがなくてはそれを聞くことができないのです。自転車で出かけることが好きだといっても、自転車に乗るスキルが獲得されていないと、サイクリングを楽しむことは出来ないのです。余暇を楽しむためにはスキルを学習する必要があるということです。
そのスキルを獲得したらそれだけで余暇を楽しむことができるのか、まだ不十分です。というのも、そのスキルを生かす機会が必要だからです。いくら自転車に乗れたとしても、自転車に乗る機会がなければ、それを楽しむことはできないからです。余暇を楽しむためには、そのための時間や場所、機会などが必要だということです。
重要なことがもう一つあります。それは、自己決定する力です。余暇の場合は、ある時間に決まって必ず何かをしなければならないというものはありません。それをするかしないかは、自分で決めることができるのです。また、人から言われてするものではありません。自分で決めなければならないのです。余暇を楽しむためには、自己決定や選択する力が必要になってくるのです。

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卒業後の生活も見通して

学校は人生の通過点です。平均寿命が80歳程度になっている現在では、卒業後の人生をいかに楽しむかということはとても重要な問題です。単純に考えると、卒業後に60年以上の人生があるからです。仕事帰りの楽しみや毎週の土日の楽しみ、アフターファイブ、ウィークエンドの楽しみ方は人さまざまです。障がいの有無にかかわらず、働くことから解放されるアフターファイブ、ウィークエンドに自分らしい過ごし方を見つけることは、豊かな人生を送るための大事な条件の一つになるのです。このように、余暇は、生きていくうえでとても大切なのです。とりわけ、知的障がい、自閉症スペクトラムの人は、どうしても経験不足になりやすいため、余暇の過ごしかたを学ぶことが重要になるのです。

 

一人でできるものを増やす

認知的・社会的な面での発達障がいが大きい人の場合は、一人で一定時間を過ごすことができるようにする力を育てていく必要もあります。一人でCDを聴いて過ごすことができたり、パズルをして過ごすことができたり、好きなシールを目印のところに貼ったりすることができるだけでもいいのです。

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写真は、好きな動物の写真を見て一人で時間を過ごしているNくんです。ファイルに拡大した動物の写真をいれています。写真のうえには、マジックテープが貼られていて、左側にあるケースから同じ動物の写真を選んで貼っていきます。これを使って一人で楽しみながら時間を過ごすことが出来ています。
例えば、就労でほんの10分の休憩時間に、手持ち無沙汰になり、うろうろと休憩場所から離れたり、禁止されている場所に入ったりしてしまうことがあります。一人でできるものを増やすことには、就労の機会にもとても重要になってきます。ほんの10分ですが、休憩時間は、何をしていいのか分からずに大変な苦痛を与える10分になることもあります。昼食時間(約1時間)に休憩(余暇)が出来なく(休憩時間の過ごし方がわからない)、会社とトラブルになるケースもあります。

 

余暇活動実現のための支援方法の準備

必要に応じて、活動のための手順書やスケジュール、移動や支払いのためのジグ、コミュニケーションの補助手段など、活動に必要な支援方法を事前に準備して取り組んでいます。余暇活動にはお金がかかることも多々あります。その場合には金銭管理に関わるアドバイスや自分でわかる金銭管理の手だてを準備することにも関わります。
働くことは、定年になると終わりになりますが、余暇は、定年後も続きます。極端な例えでは、生涯にわたり余暇は必要です。なぜなら生きる活力、明日につながる力になるからです。もっとたくさんの人に余暇の過ごし方、余暇の大切さ、素晴らしさを理解していただきたい。有名な言葉があります。「仕事は遊び。遊びは仕事。」余暇は、私たちが考えている以上に、難しく大きな課題で重点的に取り組まなければなりません。想像してみてください。余暇の時間が苦痛となる人生を…。

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